外部の助言が組織変革をしやすい理由を、シミュレーションで理解してみた
組織をつくっている人間として、なぜ内部構造を良く知っている人間は組織改革を起こしづらく、あまり内部構造を把握していない外部の人間の意見の方が組織改革を起こす火種になりやすいのだろうか、と長年思っている。 この疑問の1つの答えを、群衆の英知もしくは狂気を使って、視覚的に説明出来ることがわかった。
きっかけ
先日、"群衆の英知もしくは狂気"のWEBサイトが公開され、Twitter上でも話題になった。 ncase.me
この内容で私が最も驚いたのは、
"少ないつながりでは複雑な概念は拡散しない。でも多すぎるつながりも集団浅慮で破壊される。"
というものだ。 私は直感的にはこれを理解していたものの、でもつながりは多ければ多い程、正しい考えに至るのではないかとも考えていた。 しかし、このWEBサイトで実際にシミュレーションした結果、その考えが誤っていたことがわかった。
ただ、このときはなるほどーぐらいで、特に現実の問題に落とし込もうとは思っていなかった。
きっかけ2
8/19に技術書典5*1の執筆作業をサボって、のんびりTwitterを眺めていたら、 @kin_mokusei さんが面白い実験をしていた。
流行りものを使って、田舎でよそ者が排除されるの図を描いてみた。つながり=ネットワークが強固すぎるのよね。:どうして群衆は賢く振る舞ったり、口がきけなくなったり、親切になったり、残酷になるのだろうか? 人のつながりに関するインタラクティブなガイド: https://t.co/c6b8FM1rR9 pic.twitter.com/yx5ApWFeYT
— 金木犀 (@kin_mokusei) August 18, 2018
さて、それでは元からの住人全員とつながりができたとしましょう。それでも閾値に達せず(ここでは25%に設定)、排除されるのです。それぞれの住民にとっては5%のつながりでしかないし、残り95%から「あいつは変わりもんだ」「この地域のことが分かってない」などと吹き込まれるでしょう。 pic.twitter.com/A7eZGeyWLL
— 金木犀 (@kin_mokusei) August 18, 2018
では村の考えを変えようと思ったらどうなるか。この位必要になります。右上が移住者・協力者のネットワークだと思って下さい。村は20人で構成され、全員がつながりをもっていますから、移住者含めて5人から情報が入れば25%の閾値を超えます。 pic.twitter.com/l07kWaCdso
— 金木犀 (@kin_mokusei) August 18, 2018
しかし危ないのが、「村の誰かが閾値を超えた次の瞬間、全員が100%になってしまう」ということです。これは新たな排除を引き起こします。人のつながり=ネットワークが濃すぎると、0か100しかない。田舎の村に限らず、どこかで見た光景ではありませんか?…ここまでシミュレートできるのは面白いです。
— 金木犀 (@kin_mokusei) August 18, 2018
なるほど、こうやって現実の問題をシミュレーションしてみると面白いな、と思ったので、自分の組織の変革を起こすにはどうしたら良いのだろうか、とシミュレーションを10分程度試してみた。
実際にシミュレーションしてみた
前提
- 組織には6人存在して、全員つながりがある
- 意見を言う外部の人間を感染者とする
- 組織変革の意見を言う人(組織変革者)と、組織の1人(リーダー)はつながっている
- 感染度合いは25%とする
実験1: とりあえず前提条件のまま走らせてみる
当然だが、何も変わらない。
実験2: 組織変革者に内情を把握させてみる
組織変革者がやってきて、内部事情を全部把握させて、組織変革者を全員とつなげてみる。
しかし、他の6人からすると、1/6の意見でしかないので、変革しようとしない。 尚、つながりをちょっと切っても当然変わらない。
実験3: 内情を把握している組織変革者に、客観的な意見を言う外部の人間をつけてみる
次に、客観的な意見を言う外部の人間をつけ、組織変革者とリーダーをつなげてみる。
シチュエーションとしては、
- リーダー: 組織改革をしたいと思っている人
- 組織変革者: リーダーに任命された組織変革専門の内部の人間
- 外部の人間: 外部から雇われたコンサルタント
と考えるとイメージしやすい。
この状態で、シミュレーションすると・・・ 全員が変わる。
この実験から、組織変革をしたいと考えた内部の人間に外部の人間を1人つけて、組織内にもう1人インフルエンサーを作れば、組織変革が進むことがわかる。
実験4: 内情を把握していない組織変革者に、客観的な意見を言う外部の人間をつけてみる
今度は、組織変革者を外部の人間と仮定とし、組織にはリーダーとだけつながっていて、さらに客観的な意見を言う外部の人間をつけてみる。客観的な意見を言う外部の人間もリーダーとだけつながっているとする。 つなげてみると以下。
シチュエーションとしては、
をイメージするとわかりやすい。
ここでシミュレーションしてみると・・・ となり、変革は起こせない。
ここでわかるのは、リーダーが外部の人間とつるんで改革しようとしても、その外部の人間と他の組織の人間がつながっていないと変革は起こせないということだ。
実験5: 実験4に、客観的な意見を言う人が内部の人間とつながってみる
今度は、実験4の状況に、さらに客観的な意見を言う人が内部の別の人間とつながってみる。
シチュエーションとしては、
をイメージするとわかりやすい。 すると・・・ 変革が起こせることがわかる。
じゃあ、ここから更に、客観的な意見を言う外部の人間が、どんどん内部の人間とつながってみたらどうなるだろうか?
3人では・・・ うまくいった!
では4人では・・・ あれ???変革が起こせなくなった。
つまり、このシミュレーションから、客観的な意見を言う外部の人間が内部の人間とつながりを作り、内部事情を知れば知るほど、変革が起こせなくなることがわかる。こんなに簡単なシミュレーションで、この事実がわかるのは驚きだ。
終わりに
再掲となるが、群衆の英知もしくは狂気にあったとおり、
"少ないつながりでは複雑な概念は拡散しない。でも多すぎるつながりも集団浅慮で破壊される。"
というのはどうやら真実そうだ。 他にも、組織で起こっている課題解決をどうやったら組織に広められるかをシミュレーションしてみると、面白い事実が続々を上がってくるかもしれない。
*1:10/8 技術書店5 う17に Growthfactionというコミュニティから本を出します