Joy, Inc.を読んで、幸せなチーム作りを考えてみた
私は日々、幸せな組織を作りたい、と思っています。幸せな組織とは、笑いに満ち溢れ、物事について真剣に議論し、困難なことも前向きに取り組んでいる組織です。自分の見ているチームメンバーが、主体的に動いて課題を解決していく姿を見ると、うれしくなります。逆に、モチベーションが下がって暗い表情を浮かべている人を見ると、チームに何か問題があるんじゃないか、何も言えない雰囲気になってしまっているんじゃないか、やらされ仕事になってしまっているんじゃないか、といろいろ考えてしまいます。
これまでの経験上、良い状態のチームと良くない状態のチームをまとめると、以下の通りです。
- 良い状態のチーム
- お互いを尊敬出来ている
- 特定の人物が特定の機能を担当していない
- 助け合いが出来ている、困っている人を積極的に助けている
- 現状に甘んじない
- メンバー同士でタスクの進捗に対して突っ込みを入れている
- 自分たちでタスクを定義している
- 良くない状態のチーム
- チームメンバーを攻撃する
- 機能の専属担当者がいる
- 自分のタスクを終わらせることが最優先になっている
- 問題を抱えているのに、現状を変えようと行動しない
- チームメンバーのタスクの進捗に興味がない
- タスクの定義を他者にまかせている
さて、本題の『Joy, Inc.』では、まさに上記の良い状態のチームを組織全体で推進している会社メンロー・イノベーションズ社が紹介されています。読みながら良いこと書いてる!と思ったところに付箋を貼っていったら、付箋だらけになってしまいました ;)
- 作者: リチャード・シェリダン
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2017/01/20
- メディア: Kindle版
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ここでは特に共感した3つの文章を、自分の体験を交えて紹介したいと思います。
経験と熟練に頼ってはイノベーションを起こせない
チームを構成するときやチーム開発をするとき、どうしても経験と熟練に頼りたくなってしまうことってあります。あるあるなのが、XXXの機能はAさんが良く作っているから、Aさんにお願いしよう、といつもなるパターン。Aさんがその機能を作り続けるのは短期的には効果があるかもしれないですが、長期的にはAさんが他の機能を作る時間を奪っていて、それによるイノベーションを消してしまっている可能性があるんですよね。しかも、Aさんに任せ続けることで属人化が進み、Aさんがいないとチームが回らない状態になったり。
メンロー社では、新しい言語もツールも働きながらチームで学んでいくスタイルで、好奇心とオープンに人から学ぶ文化があるようです。特に、好奇心を育てるのは重要だとこの本でも述べられています。
自分のチームも好奇心・挑戦心を大切にしています。例えば、あまり前に踏み出せない人の背中をちょっとだけ押してみたりします。最初は戸惑うんですが、気がついたらちゃんと成果を上げられるようになっていて、自信にもつながり、また次の挑戦をしてみようという気になります。失敗することももちろんあるんですが、そもそも挑戦なのでそんなもの。そうやって挑戦を繰り返せば、チームとして新しいことをどんどんやっていく風土が出来ていて、困難だと思っていた山も超えられるようになります。(私は何度もその瞬間を目撃しました)
恐怖から解放されるためには、安全だと感じられなければならない
心理的安全性の話ですね。この本によると、安全だと感じられると・・・
- 実験するようになる
- 許可を求めなくなる
- 退屈な会議を避けるようになる
- 失敗を受け入れる文化になる
- 大きくて遅い致命的な問題より小さくて速い問題のほうが良いと学ぶようになる
と書かれています。
心理的安全な状態がチームを活性化させるというのは、私も何度も見てきました。心理的安全な状態にするのは、HRT(謙虚、尊敬、信頼)と、固定概念の壁を取り除きつつ適切なガードレールを敷くことだと思っています。HRTについてはTeam Geakに詳しく書いてあるのでそちらを見ていただくとして、後者の壁とガードレールの話を少しします。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
- 作者: Brian W. Fitzpatrick,Ben Collins-Sussman,及川卓也,角征典
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2013/07/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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チームに強く依存する話だと思いますが、
- 無意識(無自覚)
- 意識(不安)
- 意識(快適)
- 無意識(習慣化)
というプロセスをチームが通るのが今までの経験上多く、特に、チームとしてのパフォーマンスは2から3になるときに劇的に変化します。
2から3へ私が移行促進するときには、まず今の固定概念の壁を取り去るように働きかけます。誰かと話すときは誰かに通さなければいけないんじゃないか、他の職種にいきなり依頼して良いのだろうか、困っている問題を自分の力で解決しなければいけないんだろうか・・・などといった様々な壁が存在します。 これらの壁は全て自分がどこまでやっていいのだろうか、やりすぎたら怒られないだろうか、という恐怖が根底にあると思っています。なので、そんな壁は無くていいんだよ、対話しようよ、と背中押しをしていきます。
次に、何も考えずにそれらの壁を取り去るとチームが大混乱するので、ガードレールを敷きます。具体的には、コミュニケーションパスの整理、オープンな場で話し合う勇気付け、権限の範囲決め、信頼関係構築促進など、コミュニケーションの道作りを行います。実際にやってみたら想定と違った、もう少し権限移譲しても良い、などはあるのでチームの状況に合わせて修正も行います。
上記の2ステップを実施していくと、少しずつではありますが、不安な状態から快適な状態へ移行していくケースがこれまで多かったです。
一番大事なリーダーシップの瞬間は、僕たちが外れてチームに引き継がせるとき
チームにいつまでもリーダーが居続けるとは限らず、いつかリーダーは離れていくものです。そういうときに、のぞんでいない方向に物事が進んでしまうことを受け入れること、間違いを犯してチームが学習しリーダーシップが培われていくのを我慢強く見守ることが重要だと書かれています。
この、"我慢強く見守ること"の難易度は高いなあといつも思っています。自分が見ているチームに対しても、あえて見守る場合があるのですが、そうするとチームやメンバーが転んでいくさまを目の当たりにします。見ているのは本当に辛いし、出来ることなら転ばないようにしたいのですが、でも、転ばないとわからないことってあるんですよね。転んだ後に、「じゃあこれを二度と起こさないようにするためにはどうすればいいんだろう」と振り返り、自分たちで何をするべきかを決めるように促します。こうすることで各メンバーがリーダーシップを発揮するようになり、"自分たちの自分たちによる自分たちのためのチーム"を作るようになります。(そして、ああ見守っておいて良かった、と安堵します)
終わりに
Joy, Inc.には、今回の記事で書ききれなかった、組織を良くするための方法や考え方が書かれています。組織を動かす人に特に読んで欲しいのですが、組織に属する人全員が読むことで、どうすれば組織が良くなるんだろう、をメンバー同士で議論するきっかけになるんじゃないかなと思います。この本をきっかけに世の中に良い組織がどんどん出来るといいですね。